『猫のわさびが言うことには』– 猫目線のショートストーリー –
この物語は、白猫の「わさび」を主人公とした温かく穏やかな日常を描くショートストーリーです。わさびはおばあちゃん猫でありながら、若々しい姿で静かな縁側のひなたぼっこを楽しんでいます。彼女は腎臓病を抱えているため、週に二度の通院が日課となっていますが、家でのんびり過ごすことが何よりの幸せです。物語は、わさびの視点から、彼女の飼い主である60歳の「ゆう子さん」、その娘で30歳の「けいと」、そして、けいとが飼っている茶色のトイプードル「ころも」との何気ない日常を描いています。
ゆう子さんは、離婚後に実家をリフォームし、デザイン事務所を開いて暮らしています。職業柄、身だしなみには気を使い、外見はしっかりしていますが、どこかおっちょこちょいなところもある女性です。一方、娘のけいとは、少しゆるく見えるものの、実はしっかり者で、イラストレーター兼デザイナーとして働いています。彼女は時折、ゆう子さんの家を訪れては、一緒に仕事を手伝いながら、母娘で穏やかな時間を過ごします。
物語の舞台は、ゆう子さんのリフォームした古民家の縁側で過ごすわさびの視点を通して、家族との絆、平穏な日常、そして普通の生活に込められた幸せが描かれています。ころもの無邪気な存在や、母娘の温かいやり取りが、わさびの心を癒し、毎日の暮らしを彩ります。特に何か大きな事件が起こるわけではありませんが、登場人物たちが穏やかに過ごす日々の中で、小さな幸せや喜びが描かれる心温まる物語です。
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『猫のわさびが言うことには』
第3話:「わさびの避妊手術」
あの日、私には何が起こるのか全くわかっていなかった。いつもと変わらない朝で、けいととゆう子さんが優しく話しかけながら、私を抱きかかえていた。けいとの腕はいつも温かくて、私はその中にいると安心できた。けれど、その日は少し違った。けいとの顔... -
『猫のわさびが言うことには』
第2話:「保護猫だったわさび…」
13年前、私は保護親のもとで仲良しの虎猫と一緒に育てられていた。保護親は優しく、私たちは毎日安心して過ごしていた。しかし、その日、突然「里親募集のイベント」に連れて行かれることになった。車の中、虎猫は不安そうな顔をして私を見つめていた。私... -
『猫のわさびが言うことには』
第1話:「縁側でひなたぼっこ」
白猫のわさびは、ぽかぽかとした陽が差し込む縁側に寝そべり、心地よい温かさを感じていた。この場所はわさびにとっての特等席だ。年齢を重ねたわさびは、もうおばあちゃん猫だが、この縁側で日向ぼっこをしている時間は、一日の中で一番好きな時間だ。体... -
『猫のわさびが言うことには』
『猫のわさびが言うことには』はじめに
この物語の主人公は、14歳になる白猫のわさび。おばあちゃん猫だが、若見え。優雅さと落ち着きを持ち合わせた猫。腎臓に持病があり、週に何度か病院へ通いながらゆったりと日々を過ごしている。彼女の目に映る世界は、いつも穏やかで愛に満ちている。この...
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