『猫のわさびが言うことには』– 猫目線のショートストーリー –

この物語は、白猫の「わさび」を主人公とした温かく穏やかな日常を描くショートストーリーです。わさびはおばあちゃん猫でありながら、若々しい姿で静かな縁側のひなたぼっこを楽しんでいます。彼女は腎臓病を抱えているため、週に二度の通院が日課となっていますが、家でのんびり過ごすことが何よりの幸せです。物語は、わさびの視点から、彼女の飼い主である60歳の「ゆう子さん」、その娘で30歳の「けいと」、そして、けいとが飼っている茶色のトイプードル「ころも」との何気ない日常を描いています。

ゆう子さんは、離婚後に実家をリフォームし、デザイン事務所を開いて暮らしています。職業柄、身だしなみには気を使い、外見はしっかりしていますが、どこかおっちょこちょいなところもある女性です。一方、娘のけいとは、少しゆるく見えるものの、実はしっかり者で、イラストレーター兼デザイナーとして働いています。彼女は時折、ゆう子さんの家を訪れては、一緒に仕事を手伝いながら、母娘で穏やかな時間を過ごします。

物語の舞台は、ゆう子さんのリフォームした古民家の縁側で過ごすわさびの視点を通して、家族との絆、平穏な日常、そして普通の生活に込められた幸せが描かれています。ころもの無邪気な存在や、母娘の温かいやり取りが、わさびの心を癒し、毎日の暮らしを彩ります。特に何か大きな事件が起こるわけではありませんが、登場人物たちが穏やかに過ごす日々の中で、小さな幸せや喜びが描かれる心温まる物語です。

1