夏目紫陽花は、静かでシャイな19歳だった。人と話すことが苦手で、特に大勢の前ではどうしても萎縮してしまう。しかし、彼女には情熱を燃やせるものがあった。それは、プログラミングだった。
中学生の頃、偶然手に取ったプログラミングの本に夢中になった紫陽花は、それ以来、独学でコーディングを学んできた。数字やコードに向き合っているときだけは、不思議と心が落ち着く。コンピューター画面に映し出される無数のコードが、紫陽花にとってはまるで言葉のように感じられ、そこに自分だけの世界を築いているような感覚があった。
だが、どれだけ技術を磨いても、彼女の心の中にはある種の不安があった。「この技術を使って、私は何を成し遂げたいんだろう?」漠然とした目標しか持てず、紫陽花は一歩踏み出す勇気がなかった。自分には何ができるのか、どんな夢を持つべきなのか、それすらもわからなかった。
ある日、紫陽花はオンラインでプログラミングフォーラムに参加してみることにした。そこでは同じようにプログラムに興味を持つ人々が集まり、互いにアイデアを共有したり、助け合ったりしていた。彼女はしばらく観察していたが、やがて勇気を出してコメントを投稿した。
「初めまして。まだ初心者ですが、最近データ分析に興味があります。アドバイスがあれば教えてください」
いつもならこうした場で発言するのを躊躇していた紫陽花だったが、この日は不思議と心が軽かった。しばらくして、フォーラムのメンバーたちが温かく迎え入れてくれた。特に、あるメンバーからの返信が紫陽花の目を引いた。
「データ分析は面白いよね!私も興味があって、最近サステナビリティに関連するデータを扱っているの。もしよかったら一緒にプロジェクトやってみない?」
それは、桜子だった。桜子は別のコミュニティで知り合った紫陽花に親しみを感じ、今後何か一緒にできることがあるのではないかと提案してきた。紫陽花は少し驚いたが、桜子の明るい提案に自然と頬が緩む。
「サステナビリティ…?面白そうですね。ぜひお話を聞かせてください」
これが、紫陽花が未知の可能性へと一歩踏み出すきっかけとなった。プログラムとデータを使って、彼女ができること、彼女にしかできないことが見えてくるのはまだ先の話だが、この出会いが彼女の人生を大きく変えるのだった。
次回予告
自信を持てない紅葉が、自分のデザインに悩み続ける中、桜子との交流を通じて新たな発見をする。4人の若者たちが少しずつ惹かれ合い、互いに刺激を与え合うことで、それぞれの可能性が開かれていく――。
次回、第3話: 「紅葉、葛藤と向き合う」
デザイナーとしての自分に自信を持てない紅葉が、成長への一歩を踏み出す。
作者の勝手なオススメソング!「自分なんかにできるのかな?」そんな時に勇気を貰える曲
君に捧げる応援歌 ~YELL FOR YOU~/ HIPPY~「ビクビクするのもワクワクも自分次第」
「やりたいことに踏み出すのを躊躇っている紫陽花のような人に、この曲を聴いてほしい。」きっと背中を押してくれるから。私もその一人です。