第10話: プロジェクトの具体化

物語を音読します

初めてのオフラインミーティングを終えた4人は、新たな目標に向かって動き始めた。彼女たちのサステナブルファッションプロジェクトは、リアルなイベントだけでなく、メタバースでのバーチャル試着体験も取り入れることになっていた。

紫陽花は、自分が担当する技術部分の進行に集中していた。プログラミングが得意な彼女は、システムを組み、リアルタイムでアバターが服を試着できる仕組みを構築することに取り組んでいた。彼女の前には、複雑なコードと画面いっぱいに並んだデジタルデザインが広がっている。

「これが成功すれば、私たちのプロジェクトは大きく前進する…」紫陽花は自分に言い聞かせながら、パソコンに向かっていた。

しかし、問題が発生した。予期せぬバグがプログラムに現れ、システムが途中で停止してしまったのだ。試着用のアバターがうまく表示されず、紫陽花は何度も調整を試みたが、原因が掴めないまま時間だけが過ぎていった。

「どうしてうまくいかないんだろう…?」紫陽花は焦りを感じながらも、解決策を探し続けた。

その時、彼女のスマートフォンが鳴った。画面には柚からのメッセージが表示されていた。
「どう?調子は?」
紫陽花は迷ったが、正直に返信した。
「バグが出て、うまくいかない…」
少しして、柚からの返事が返ってきた。
「大丈夫、必ず解決できるよ。私たちみんなで支えるから」

柚の言葉に、紫陽花は少しだけ安心した。自分ひとりで全てを抱え込む必要はない。仲間たちがいるのだ。


一方、柚は資金調達の方に奔走していた。新たな技術を導入するためには、追加の資金が必要だった。彼女はこれまでの企業からのサポートに加え、サステナブルファッションに共感する新しい投資家を探していた。しかし、思うように話が進まず、スポンサー獲得は難航していた。

「今さら資金不足なんて言えない…」柚は焦りを隠しつつ、冷静に次の手を考えていた。彼女には、クラウドファンディングというプランがあった。サステナブルファッションというテーマは、若者たちから多くの支持を得られる可能性が高い。その熱量をうまく利用できれば、資金を集める手段として有効だと考えたのだ。

その計画を立て、桜子に話すと、彼女はすぐにSNSで告知を出す準備を進めた。
「私に任せて!クラウドファンディング、きっと成功させるから」桜子の明るい笑顔が、柚を少しだけ安心させた。

その後、クラウドファンディングの告知はSNSを通じて広がり、多くのサポーターが現れた。サステナブルファッションに共感し、4人の挑戦を応援する声が続々と集まった。


数日後、4人は再びオンラインミーティングを開いた。桜子はクラウドファンディングの進捗を報告した。
「信じられないくらい支援が集まってる!みんなが私たちのプロジェクトを応援してくれてるんだ」桜子は誇らしげな笑顔で、画面越しにその結果を見せた。

「これで、資金面はなんとか乗り越えられそうだね」と柚は冷静に話をまとめながらも、内心ホッとしていた。

「技術面ももうすぐ完成する。少しだけ時間が欲しいけど、必ずうまくいくから」と紫陽花も前向きに報告した。

紅葉は、デザインがバーチャル空間で表現できることに期待を込めていた。
「実際にバーチャル試着ができたら、私のデザインがどんな風に見えるのかすごく楽しみ。サステナブルな素材がどう表現されるかも、新しい発見があるかもね」

4人の会話は、自然と未来への展望へと広がっていった。それぞれが異なる分野で活躍しながらも、共通の目標に向かって進んでいる。その一体感が、彼女たちをさらに強く結びつけていた。


そして、ついにその日が訪れた。紫陽花はシステムの最終チェックを行い、バーチャル試着体験が無事に動作するかを確認していた。アバターがスムーズに動き、服を着替える様子がリアルタイムで表示された瞬間、彼女は思わず息を飲んだ。

「やった…ついに成功した…!」紫陽花は大きく息をつき、パソコンの画面をじっと見つめた。これまで何度も挫折しかけたが、今この瞬間に全てが報われたような気がした。

その夜、4人は再び集まり、彼女の成功を祝った。
「紫陽花ちゃん、本当にありがとう!これで私たちのプロジェクトは大きな一歩を踏み出せるよ」と桜子は声を弾ませた。

「これからが本当のスタートだね」と柚も穏やかに微笑み、皆に感謝の気持ちを伝えた。
「みんなで力を合わせれば、何だってできる。今までが証明してくれたよ」

紅葉も感動を隠せず、紫陽花に感謝した。
「私たちのデザインやアイデアが、こうして形になるのがすごく嬉しい。本当にありがとう」

4人はその日、未来への新たな決意を胸に抱いた。彼女たちはこの瞬間を忘れないだろう。自分たちの力を信じ、共に歩んできた道のりが、ついに実を結び始めたのだ。


次回予告

バーチャル試着のシステムが成功し、プロジェクトはついにイベントの最終段階へと進む。だが、メタバースとリアルの融合が果たしてどのように受け入れられるのか――その結果を待ち焦がれる4人に、新たな試練が訪れる。

次回、第11話: 「メタバースの壁」
メタバースでのイベント開催に向けて準備が進む中、予期せぬ技術的なトラブルが発生。4人は再び試練に直面する。4人は再び試練に耐える。


サスティナブルファッションとは

環境や社会への配慮を重視したファッションのスタイルや取り組みを指す。具体的には、再生可能な資源やエコ素材を使用した衣類、労働者の人権を尊重した生産過程、使い捨てではなく長く愛用できるデザインが特徴。環境にやさしく、持続可能なファッションの提案が広がっている。
環境省_サステナブルファッション


作者の勝手なオススメソング!「一瞬迷うけど必ず道はある!届かないゴールなんてない。」

いきものがかり『心の花を咲かせよう』(Amazonmusicが開きます)心の花を咲かせよう 第87回全国高校サッカー選手権大会(Youtubeが開きます)優しいメロディと想いのこもった歌声が勇気をくれる

この曲を4人に届けたい。必ず道はあるから、「今の自分で間違いない」

イラスト・デザイン・文章/浜辺ゆう子

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