第12話: 成功への一歩


メタバースでのバーチャル試着システムと、イベントでのファッションショーの準備が進み、4人はついにプロジェクトの最終段階に入っていた。システムトラブルを克服し、資金の壁を乗り越えてきた彼女たちのプロジェクトは、予想を超える形で成長していた。だが、いよいよイベント直前のこの日、全員が緊張と期待に包まれていた。


桜子が、SNSでの告知について話を始める。
「みんなからの反応がすごくて…私たちが目指しているサステナブルファッションに共感してくれてるみたい!」
画面には、彼女たちのイベントを応援するメッセージが次々と寄せられている。共感の輪が広がっているのを感じ、桜子は喜びで胸がいっぱいだった。

紅葉は、新しく仕上げたファッションデザインについて説明を始める。
「今回は秋らしい色合いと、環境に優しい素材を使ったデザインにしたの。長く使えて、着る人に温かみを感じてもらえるようにしたくて…」
紅葉の想いが詰まったデザインは、シンプルでありながらも心に残るものだった。彼女は、このイベントが持つ意味をデザインを通じて伝えたいと強く思っていた。

一方、紫陽花は技術的な最終確認に余念がない。システムが本番でうまく動作するように、何度もチェックを繰り返していた。
「紫陽花ちゃん、大丈夫?」と柚が尋ねると、紫陽花は少し照れながらも答えた。
「うん、大丈夫。万が一のためのバックアップも用意してるから、きっと問題なく動くはず」

柚はみんなを見渡し、静かに微笑んだ。
「私たち、ここまで本当によく頑張ったね。みんなが一つの目標に向かって進んで、ここにたどり着けたことが嬉しい」

4人は、これまでの努力を振り返りながら、互いに労をねぎらった。


イベント当日の朝、4人は早朝から会場に入り、最終確認を行った。バーチャル試着システムの準備も整い、リアルなファッションショーの会場も華やかに飾り付けられていた。彼女たちは、それぞれの役割を果たしつつ、最後のリハーサルに臨んだ。

開場の時刻が近づき、来場者たちが続々と会場に集まってくる。桜子は受付の手伝いをしながら、来場者と直接会話を交わしていた。
「ようこそお越しくださいました!今日は私たちのサステナブルファッションをぜひ楽しんでくださいね」
彼女の明るい笑顔が、来場者たちに温かい印象を与え、場の雰囲気を和ませていた。

紅葉は、自身がデザインした服がランウェイで披露されるのを控え、ドキドキと緊張を感じていた。紫陽花と柚がその様子に気づき、紅葉のそばに寄っていった。
「紅葉ちゃん、大丈夫。あなたのデザインは素敵だから、きっとみんなに感動を与えるよ」と、紫陽花が優しく励ました。
「その通り、紅葉のデザインが今日のハイライトになるから、自信を持ってね」と柚も静かに微笑んだ。


そして、いよいよイベントがスタートした。バーチャル試着システムでは、来場者が自分のアバターで服を試着する体験を楽しんでおり、まるで自分がモデルになったかのような感覚に驚きと感動の声が上がっていた。

「これ、本当に私!?なんだか未来を感じる…」と試着を楽しむ来場者の声に、紫陽花は感激の表情を浮かべた。自分が技術的なサポートをしたこのシステムが、来場者に喜びをもたらしているのを感じ、胸が熱くなった。

一方、ランウェイでは紅葉のデザインが次々と登場し、会場が華やかに彩られていく。紅葉は、その光景を見ながら、涙をこらえきれずにいた。


「私のデザインがこんなに多くの人に見てもらえるなんて…夢みたい」
桜子がそっと紅葉の肩に手を置き、「紅葉ちゃんの努力が実ったんだよ。本当におめでとう」と声をかけた。

そして柚は、全体の進行を見守りながら、次のステップへの期待に満ちた気持ちでこの成功をかみしめていた。イベントの最後、柚はマイクを持ち、会場に集まった人々に語りかけた。
「本日は私たちのサステナブルファッションプロジェクトにお越しくださり、ありがとうございます。皆さんが私たちの想いに共感し、こうして集まってくださったことが本当に嬉しいです。これからも、ファッションを通じて持続可能な未来を一緒に築いていきたいと思います」

柚の言葉に、会場は大きな拍手に包まれた。4人は、その瞬間に感じた達成感を共有し、互いの手を取り合った。


次回予告

イベントの成功で自信をつけた4人だが、新たな目標に向けたステップが待ち受けている。サステナブルファッションの取り組みをさらに広げるため、彼女たちは新しい挑戦に踏み出す決意を固める――。

次回、第13話: 「メンバーそれぞれの成長」
次のステップを見据え、4人はさらに大きな目標に向けて一歩踏み出す。最終調整に入る。緊張と期待が高まる中、彼女たちは再び力を合わせて未来を切り開く。


サスティナブルファッションとは

環境や社会への配慮を重視したファッションのスタイルや取り組みを指す。具体的には、再生可能な資源やエコ素材を使用した衣類、労働者の人権を尊重した生産過程、使い捨てではなく長く愛用できるデザインが特徴。環境にやさしく、持続可能なファッションの提案が広がっている。
環境省_サステナブルファッション


作者の勝手なオススメソング!「だれもが突然わかる瞬間がある“なりたい姿”、そして“なんでこれが私にとってどんなに大切なことか”を」

KT Tunstall – Suddenly I See (Official Video)(Youtubeが開きます)/ Suddenly I see 突然わかったのThis is what I wanna be これが私がなりたい自分だってこと

このタイミングにはこの曲しかないと思いました。彼女たちがあるきっかけで、それぞれに突然わかった“なりたいもの”。この回では、4人がそれに少し近づけました。

イラスト・デザイン・文章/浜辺ゆう子

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