柚の部屋はいつも整然としていたが、その日は少し違った。机の上には開いたノートパソコン、壁に貼られたメモ、そしてその横には手書きのスケッチが並んでいる。紅葉が彼女を訪ねたとき、普段落ち着いている柚が少しだけ焦ったように資料を片付けようとしていた。
「何これ?隠さなくていいよ」紅葉がにやりと笑いながら声をかける。
「えっと…まだはっきりした形にはなってないんだけどね」柚は仕方ないといった表情で資料を手渡した。
紅葉が目を通すと、そこには見慣れないテーマの企画書が書かれていた。
「地域活性化プロジェクト?」紅葉が首をかしげる。
柚は少し照れたように話し始めた。
「これ、ずっと温めていたアイデアなんだ。私、ずっと思ってたの。都会でサステナブルとか環境問題とか考えるのはもちろん大事だけど、地方にも目を向けたいって。地方の文化や技術って、実はすごく魅力的なものがたくさんあるのに、注目される機会が少ないから…」
紅葉は真剣な眼差しで柚の話を聞いていた。
「確かに、そういう伝統とか地元の力を活かすのってサステナブルだよね。どんなプロジェクトにしたいの?」
柚の目が輝いた。
「例えば、地元の職人さんとコラボして商品を作ったり、若い人たちが地元の良さを再発見できるイベントを企画したり。それをオンラインとオフラインで繋げられる仕組みを作りたいんだ」
紅葉は思わず笑みを浮かべた。
「それ、絶対面白いよ。私も手伝うよ。ファッションデザイナーとして、地域の素材を使った新しいアイテムを提案してみたいし!」
その夜、紅葉から他のメンバーにも話が広がった。桜子は「何か面白そうなことしてるのね!」と即答で賛成し、紫陽花は「データ分析で役に立てそうなら協力する」と落ち着いた声で返事をした。
再び集まった4人のミーティング
翌週末、4人は紅葉の部屋に集まった。畳に座り込んだ柚が、自分のノートパソコンを開きながら説明を始めた。
「これがプロジェクトの仮タイトル。『ふるさとの未来デザイン』。地元の良さを再発見して、世界に発信するのが目標。」
桜子は興味津々で手を挙げた。
「それなら、SNSを使って若い人たちにも響くように発信してみない?インスタで地元の魅力を可視化するのってどう?」
紫陽花は少し考え込んだ後、口を開いた。
「でも、それだけだと情報が流れて終わっちゃうかも。データを活用して、どんな人たちが興味を持つのか分析したら効果的じゃないかな?」
柚は頷きながらメモを取った。紅葉も提案を始めた。
「それに、デザインで地元を盛り上げるのも面白いと思う。例えば、地元の伝統模様をアレンジして、今っぽいファッションアイテムを作るとか!」
4人のアイデアがどんどん膨らんでいく中、柚の目には少しだけ感慨深い光が宿っていた。
柚の秘めた想い
ミーティングの後、柚は静かに窓の外を見つめていた。紅葉がその様子に気づき、隣に腰を下ろした。
「柚、どうしたの?」
柚は少し照れたように微笑んだ。
「私ね、ずっと心の中にしまってた夢があるんだ。このプロジェクトで、それが少しずつ形になりそうな気がして…」
紅葉が優しく問いかける。
「どんな夢?」
「私、地方の未来を変えたいの。もっと魅力的な場所にして、若い人が希望を持てる環境を作りたいってずっと思ってた。でも、それを口にするのが怖かった。実現できるのかなって思って…」
紅葉は静かに肩を叩いた。
「柚がそう思ってるなら、私たちも応援するよ。今のプロジェクトがその第一歩なんじゃない?」
柚の目には少しだけ涙が浮かんでいた。
「ありがとう。本当にありがとう。みんながいるから、きっと何か変えられる気がする」
次回予告
地方の魅力を発信する新たなプロジェクトが動き出す。4人はそれぞれの役割を果たしながら、地域と人々を繋ぐ未来を模索する――。
次回、第17話: 「初めての逆境」
彼女たちが直面する、思いがけない壁とは?
彼女の胸に秘められた、新たな目標が明かされる。
環境や社会への配慮を重視したファッションのスタイルや取り組みを指す。具体的には、再生可能な資源やエコ素材を使用した衣類、労働者の人権を尊重した生産過程、使い捨てではなく長く愛用できるデザインが特徴。環境にやさしく、持続可能なファッションの提案が広がっている。
環境省_サステナブルファッション
作者の勝手なオススメソング!「大切な人に降りかかった雨に傘をさす。この仲間たちにもこんな関係が築かれています。」
back number – 瞬き (full)(Youtubeが開きます)/ この12月の時期にぴったりのメロディとあたたかな歌詞が心に沁みます。
何度、聴いても癒される曲です。backnumberさんの曲は繊細であたたかいですね。この4人にもこんなあたたかい相互関係が生まれてきています。初めはオンラインでの出会いでしたが…。