プロジェクトが順調に進む中、4人はサステナブルファッションイベントの準備に追われていた。展示内容、ステージ演出、協賛ブランドとの連携――細部まで計画を詰める日々。しかし、そんな矢先、思いもよらない問題が彼女たちを襲った。
「どうしてこのタイミングで……?」
桜子がスマホの画面を見つめ、ため息をつく。メールの件名は「出展キャンセルについて」。参加予定だった複数のブランドから、急なキャンセル連絡が届いたのだ。
「これじゃあ展示スペースがガラガラになるよ……」
紅葉が不安げにつぶやく。彼女がデザインした服も、このブランドの協力なしには実現が難しい。
「冷静に考えよう」
柚が間を取り持つように言ったが、声にはいつもの落ち着きが感じられない。眉間に寄ったシワが、彼女の心の動揺を物語っていた。
「原因を探るしかない」
紫陽花がすぐにノートパソコンを開き、キャンセルの背景を探り始める。得意のデータ分析を駆使して分かったのは、サステナブル素材の供給難とコスト高が主な理由だということだった。
「供給が安定してないのか……。それに高いコストか」
紫陽花が結果を伝えると、紅葉がぽつりとつぶやいた。
「これって私たちが目指していることの課題そのものだよね……。サステナブルって、やっぱり簡単じゃない。」
4人は言葉を失った。理想だけでは越えられない現実の壁。彼女たちの胸には小さな焦りが広がり始めていた。
■ 悩む4人、浮かぶアイデア
「だったら、自分たちで作れないかな?」
桜子が突然提案する。
「作るって……私たちで素材から?無理でしょ!」
紅葉が思わず反論するが、桜子は続けた。
「でも、サステナブルって“新しい考え方”でしょ?もし素材が手に入らないなら、今あるものをどう使うか考えるのがスタートなんじゃない?」
その言葉に、柚が考え込むような顔をした後、静かに頷いた。
「桜子の言う通りかもしれないね。私たちのアイデアが、今までのやり方を変えるかも」
紫陽花もキーボードを叩きながら口を開く。
「それなら、地域で使われなくなった服や素材をリサイクルして、新しいデザインに活かせないか調べてみるよ。」
「それ、面白いかも!」
紅葉の顔に微かな笑みが浮かぶ。デザイナーとして、新しいチャレンジに心が弾むのを感じた。
■ 小さな一歩を踏み出す
翌日、桜子は早速地域のコミュニティに声をかけ、不要になった服や素材の提供を呼びかけた。
「こんなに集まるなんて……みんなの協力ってすごいね!」
集まった大量の素材を前に、桜子が感激の声を上げる。
「すごい。でも、ここからが本番だね」
紫陽花が静かに答える。
紅葉は集まった服を手に取りながら、デザインのイメージを膨らませる。
「古い素材をどう生かすか、すごく難しいけど……逆に、やりがいがある気がする。」
柚はそんな3人を見渡し、確かな手応えを感じていた。
「このプロジェクトを通して、私たちが新しいサステナブルの形を見せられるかもしれないね」
「やるしかないね!」桜子が笑顔で言うと、3人も自然と微笑み、頷いた。
■ 小さな挑戦が未来を切り開く
数日後、リサイクル素材を活用した小さなプチイベントを開催した。
訪れた人々からは、次々に感嘆の声が上がる。
「これ、リサイクル素材で作ったなんて信じられない!」
「こんなにおしゃれで、しかも環境に優しいなんて素敵!」
その声を聞き、紅葉は胸の中で喜びを感じた。自分が生み出したデザインが、確かに人の心に響いている――そう思えた。
紫陽花も、データに裏打ちされた取り組みが実を結んだことを実感していた。
「やっぱり、できることから始めるのが大事だね」
柚がしみじみとつぶやくと、桜子が元気よく言った。
「よし!次はもっと大きな挑戦だね!」
■ 次回予告
新たな挑戦に動き出した4人。その活動が地域コミュニティを巻き込み、さらに大きな広がりを見せる――。次回、第18話「コミュニティ力」。
環境や社会への配慮を重視したファッションのスタイルや取り組みを指す。具体的には、再生可能な資源やエコ素材を使用した衣類、労働者の人権を尊重した生産過程、使い捨てではなく長く愛用できるデザインが特徴。環境にやさしく、持続可能なファッションの提案が広がっている。
環境省_サステナブルファッション