■ 古き良きもの、新しきもの
晴れやかな冬空の下、4人はある職人のもとを訪れていた。桜子が以前、着物リメイクについて調べていた際に見つけた、伝統技術を守り続ける工房だった。築100年以上の古い木造建築の中には、反物が整然と並び、どれもが手仕事の温かみを感じさせる美しい模様を持っていた。
「これは全て手作業で染められているんですか?」紅葉が驚いた様子で反物に触れる。
「ええ、一つひとつ心を込めて染めています。この染色技法は、うちの家族が代々受け継いできたものなんですよ。」
そう語るのは、70代の職人・村瀬さんだった。どっしりとした落ち着いた声が、その技の歴史の重みを感じさせた。
「素晴らしい…こんなに細かい模様を手作業で作るなんて。まるで芸術ですね!」紫陽花が声を弾ませる。
「でもね、最近はこれを買ってくれる人も少なくてね…。伝統を守りたいと思う一方で、今の時代にどう残していくか、悩むことも多いんだよ。」
村瀬さんの穏やかな言葉には、ほんの少しの寂しさがにじんでいた。
■ 若者の視点から生まれる革新
「村瀬さん、例えばこの模様を使って新しい形にしたらどうでしょうか?」
柚が提案する。彼女は職人の話を真剣に聞きながら、新たな可能性を模索していた。
「新しい形?」
「はい。例えば、この伝統的な模様を、現代的なカジュアルウェアやアクセサリーに応用するんです。サステナブル素材として、古い布地をアップサイクルする形で。」
桜子もすぐにアイデアを出した。
「そうだ!今は若い世代でも伝統に興味を持つ人が増えているし、パーソナルカラーに合わせてアレンジする提案をすれば、もっと魅力的になると思います!」
「確かに…。伝統的なものをそのまま残すのも大事だけど、新しい形で広げていくのも必要ですよね。」紅葉はデザイナーとしての視点から話す。
紫陽花がパソコンを開きながら提案する。
「伝統的な技術の過程をSNSで発信するのはどうですか?職人の手仕事の美しさが見えると、もっと興味を持つ人が増えると思います!」
村瀬さんは4人の意見を聞きながら、少しずつ顔をほころばせていく。
「君たちのような若い人たちがそうやって新しいアイデアを出してくれるのは、本当にありがたいよ。よし、一緒に考えてみようか。」
■ 伝統と革新の融合
翌週、4人は村瀬さんと共同で作るアイテムを発表する企画を練った。紅葉がデザインしたアイデアは、伝統的な模様をモチーフにしたストールとバッグ、そしてカジュアルに着られるボンバージャケットだった。
桜子が街で若者たちに聞き取り調査を行ったところ、伝統的な模様や素材を使った新しいデザインには興味を持つ声が多かった。
「この模様、インパクトあるけど派手すぎないし、普段使いにもいいかも!」
「しかもリメイクで作ってるっていうのがカッコいい!」
そうした声を集めたデータを紫陽花が分析し、マーケティング戦略を練る。柚はその計画をまとめ、職人たちと協力して実現へ向けたスケジュールを立てた。
「伝統を守るだけじゃなくて、時代に合わせて進化させていく。この両立が大切なんだね。」
紅葉がしみじみと言うと、村瀬さんが力強く頷いた。
「本当にそうだよ。伝統は生き続けるものだからね。止まったままではいられない。」
■ 次なる挑戦へ
最後に、村瀬さんが作った染め物を使ったストールが完成した。鮮やかで深みのある色彩に、全員が息を呑む。
「これをイベントで発表したら、きっとたくさんの人に喜んでもらえる!」桜子の声に、全員が頷く。
「伝統を未来へつなぐために、私たちができることをもっと増やしていこう。」柚の言葉に、4人は新たな挑戦への意欲を胸に秘めた。
伝統と革新が交差する場所。彼女たちはその狭間で、未来への道を切り開き始めていた。
次回予告
「いよいよイベント準備が佳境に!4人と職人たちが手がける新作アイテム、その発表の舞台が近づく中、思わぬハプニングが…?」
次回、第25話:「未来を編む糸」
伝統とサステナブルが織りなす、新たな挑戦の物語が始まる。
環境や社会への配慮を重視したファッションのスタイルや取り組みを指す。具体的には、再生可能な資源やエコ素材を使用した衣類、労働者の人権を尊重した生産過程、使い捨てではなく長く愛用できるデザインが特徴。環境にやさしく、持続可能なファッションの提案が広がっている。
環境省_サステナブルファッション
着物の織りと染め、そして、着物のすべて。知識、ほぼ皆無のわたくしなので、この機会に入口だけお勉強してみました。長年の技というのは、つくづく深くそれを受け継ぐのは、当然のことながら容易ではありませんね。これは、あまり難しく考えると着物を着られなくなりそうなので、技については少しずつですが、学んでいきたいと思います。